2019年8月4日 初日

曾根崎心中 天神森の段
大坂の醤油商「平野屋」の手代・徳兵衛は、色茶屋「天満屋」の遊女お初、見どころは、「天神森の段」道行きの場面です。道行きとは、心中のため死地におもむく男女が、風景の中をひたすら歩く場面です。以下、そこでの語りの一部です。近松門左衛門の名調子、惚れぼれします。

・・・鐘ばかりかは、草も木も空も名残りと見上ぐれば、雲心なき水の面、北斗は冴えて影うつる星の妹背の天の河。梅田の橋を鵲の橋と契ていつまでも、我とそなたは女夫星。必ず添ふと縋りより、二人が中に降る涙、河の水嵩も勝るべし心も空も影暗く、風しんしんと更くる夜半・・・
                                     
新版歌祭文 野崎村の段
白無垢姿綿帽子をかぶった花嫁おみつ。ところが、綿帽子をとると切髪で、白無垢に袈裟をかけていました。おみつはお染と久松の心中の覚悟を見抜き、二人の命を救うために身を引いて尼となったのでした。

段切の「船頭」や「駕屋」のチャリ掛かった人形の動きが、暗く落ち込んだ空気を明るくする反面、久作と「おみつ」の哀れを際だたせる演出は秀逸です。